牽牛子記

What's the story, Morning Glory?

オバマ大統領の広島スピーチ拙訳

どうせすぐに各新聞社が良質の全文訳を掲載するとはわかっていましたが、オバマ大統領のスピーチは自分の手で和訳しないといけないような気がしたので、下記の通り訳しました。

オバマ大統領のスピーチのうまさは今更言うまでもなく、確かにビデオで見ていると心を揺さぶられる個所もあるのですが、自分で訳して見えてきたのは、このスピーチの無難さ、細部での物足りなさ、極めて英語的で翻訳に適さない修辞。説明なしに引用されるアメリカ独立宣言など、本当に日本人をオーディエンスとして想定して書かれたのか。1945年の8月に「キッチンテーブル越しの配偶者」の情景など、当時の日本の住宅の構造では考えにくい、アメリカンファミリーな描写も違和感を感じます。

アメリカの歴史教科書の多くはキノコ雲の写真くらいしか載せず、日本人が社会科で見てきたような皮膚が焼けただれた被害者の写真などをアメリカ人が目にする機会は限られています。実際このスピーチに登場する広島の具体的な情景もただ「空に舞い上がるキノコ雲」であったりなど、上空から見下ろした視点から降りてくるものではなかった。原爆資料館を見学した後の(はずの)人の言葉としては不十分なものです。

現役大統領が広島の地で核廃絶を目指すことを訴えたこと自体の歴史的意義は感じるし、事前に準備した原稿から離れるわけにはいかない立場は分かるものの、大統領退任後、いつの日か、10分と言わずじっくりと資料館を見学され、ご自身の言葉で話すことが許される日が来るといいなと願うものです。

以下の拙訳、原文はThe New York Timesの記事を参照しました。

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