牽牛子記

What's the story, Morning Glory?

はやぶさ

府内の某小学校に講師として派遣されて、卒業を間近に控えた6年生3クラスの前で、はやぶさについて授業を行う機会に恵まれました。教育局の週刊ニュースで取り上げられたのだけど、映像を見返してみると、子供たちより自分がいちばん楽しんでるのがありありと分かります。 

僕自身、小さい頃にいろいろと理科の面白い話を読んで、聞いて、憧れて、中学高校あたりでは理系の素質を疑われつつも、その漠然としたあこがれだけを頼りになんとか今まで理系をやってきてるので、今度は僕があこがれを提供する番だと思ったのです。 

学校の勉強が何の役に立つのか、と思った時期も僕にありました。っていうか、ずっとそう思いながらここまで来てしまいました。 

けど今になって、その考えの愚かさ、短絡さを実感しています。なにか仕事を成し遂げるためには頭を使わないといけない。 頭を使わないときには、その代わりに、耐えて努力する根性が必要だ。 そのどっちも、勉強などを通じて身につけていくものでしょう。 

だからこの子たちには、将来、自分が楽しめる仕事をするために、勉強してほしい。 
学校の勉強なんて社会じゃ役に立たない、なんてつまらん気持ちは持ってほしくない。 

今回の僕の話でちょっとでもわくわくした気持ちを持ってほしくて。 中学・高校・大学、あるいは社会に出てからも勉強することはたくさんあって、つまらんこともあるでしょうが、その先にはきっと楽しい仕事や人生が待ってると思ってほしくて。そういう意味では、実は僕自身、授業しながら、自分を励ましたイベントでもありました。 

MUSES-Cチーム(後のはやぶさ)の輝きはすごいけど、その過程は苦難だらけだったようですから。 MUSES-Cが打ち上げられたとき、世間はその偉大なミッションに注目せず。

でも公式ブログの写真に映るリポビタンDの空き瓶は日に日に積み上がっていき。 なのに、あまりにも性急に「はやぶさ失敗 試料採取できず」などと見出しに打った新聞。 そして何よりも、未知の状況と困難に続く困難。 

その都度、アクロバティックな解法でぎりぎりの運用を続けた結果、はやぶさは帰ってきて、日本全土を喜びに包んだこと。 

もちろん、小学生相手にこんなアホくさい言い方はしませんでしたが、でもとっても大勢の人が関わって、みんな一生懸命、アイデアと努力を出し合って乗り越えたんだ、という風には、少し話しました。 

一生懸命がんばった末の、あの成功なんですよ。 はやぶさはその象徴です。 

(だから、帰ってきたとき、こんなに盛り上がったのです、きっと。) 

僕もいつか、あの人達みたいに胸を張れる仕事がしたいな、と漠然と思いました。 

十年後、いや二十年後ですかね。 

小惑星サンプルリターン研究会は1985年からずっと計画してきて実現に至ったわけですから。 それを考えると僕のライフワークも、まだわからん話ですね。 

僕の人生、みんなの人生、どうなるかな。